米国ワシントン州ハンフォードについて
About Hanford, Washington, USA
Location
ハンフォードサイトの位置
LOCATION
FACTOR
ハンフォード地域発展の要因
- ハンフォードのまちづくりの特徴は、各機関・団体が相互に連携しながら都市形成を進めてきたことにある。
- 基本は廃炉・除染を進めながら、同時並行で生活の質を高める「住みたいまちづくり」(・サラリーが高い ・物価が安い ・教育が行き届いている)というまち発展のキーワードを掲げ、そのベクトルに向かって各機関・団体が単体ではなく重層的・有機的に連携してまちづくりを推進できている。
- 底辺に流れているのは「平等」という概念であり、それが成功要因の大きな一つとなっている。
- 【経済発展と人材育成・輩出】
地元企業と高等教育機関が密接に連携し、人材輩出と産業発展が一体化し、Win-Winの関係が築かれている。
トライデックのような民間の地域経済発展支援組織が地域発展のリーダー役として存在している。 - 【地元中小企業の優先活用のルール化】
毎年ハンフォードに興味がある会社(600社ほど)が集まり会議を開いている。
そこでリストを作成し、発注に対してプロポーザル提案を出してもらう。契約金額を小さくして多数の仕事を作り、そうすることで多くの中小企業が参入できるようにしている。 - まちづくりについてハンフォード関係者が異口同音に話していたことは「透明性」と「信頼関係の確立」であった。
Organization chart
ハンフォードの組織図
What is TRIDEC?
トライデックとは?
地方紙の発刊者で地域コミュニティのリーダーであったサム・ボルペンテスト氏により、1963年に創設された。
現在のメンバー数は約300会員である。
- 目的は、国からの補助を維持し、地域経済を多様化すること。具体的には、私的な非営利団体として、将来の地域経済発展のために設立された。
- 1994年の米国エネルギー省とトライデックの間で、協定を締結した。トライデックは地域の声を代表し地域を構築する機関として認識された。
- なぜ、トライシティーズ (リッチランド市、ケネウィック市、パスコ市。最近はこれに西リッチランド市が加わる。) を対象としているかについては、単に効率性のみならず、トライシティーズとして一体に捉えた方が、一行政区毎よりもより多くの魅力を持つからである。
- 必要となれば、地域で選ばれた代表がサインしたレターを、上院議員等の有力国会議員に提出する。また、会長、副会長はいつでも上院議員に電話して様々なことを要求できる信頼関係を築いている。
- ワシントン州立大学、コロンビアベイスン短期大学等と連携し、パシフィックノースウエストエネルギー拠(PacificNorthwest Energy Hub)を設立した。
- ハンフォード・サイトの一部の土地(664万m2)が割譲され、それをいかにコミュニティに還元するかについて検討している。
- 新しいプロジェクトとして、小型の原子力発電所、ソーラーパネル、バイオ燃料、バイオ生産物などに取り組んでいる。
- ハンフォード研究地区への民間企業の誘致に取り組んでいる。
- スタッフ数は7人で、年間予算は約100万ドルである。
TRIDEC 運営委員会 (TRIDEC Board、39人の委員により構成)
構成員は、3市のマネジャーと1市の市長、3ポートのコミッショナー、3市のカウンシルメンバー、2カウンティのコミッショナー、米国エネルギー省等のマネジャー、ハンフォード・サイトの主要工事業者の社長、主要な雇用者、産業界のリーダー、高等教育機関や健康部局の担当者等である。
Stakeholder
ハンフォード周辺におけるステークホルダー
ステークホルダー
国立パシフィック
ノースウェスト研究所
(PNNL: Pacific Northwest
National Laboratory)
4,414人のスタッフ、1,124本の論文、9億6千万ドルの予算、99の特許(2018年時点)を持つ。
- かつては、100%の予算をハンフォード・サイトのために使用していたが、現在は5%程度であり、残りはハンフォード・サイト以外の研究活動に予算を使用している。
コミュニティ連携活動
- 同研究所はハンフォード地域との連携活動を重視している。具体的には、効果の高い慈善活動、リーダーシップ研修、地域住民会議、会議・イベント管理、地域科学技術セミナー、PNNLの生活・共同利用設備の規定等のプログラムがある。
STEM(地域教育力向上)活動
- 地域の教育力向上のために職員がボランティア活動をはじめとして多大な貢献活動を実施している。これらの活動は、STEM(S: Science, T: Technology, E: Energy, M: Mathematics)教育と呼ばれている。また、年間1,300人程度のインターンを受け入れ、若い世代が研究所に興味を持ち将来の雇用に結び付けていく狙いもある。
ワシントン州立大学
トライシティーズ校
(WSU-TC:Washington State University Tri-Cities)
1989年に設立。学生数1,800人で、4割以上がマイノリティ、5割以上が女子。
- 教養教育とともにSTEM教育(前述)に力を入れている。
- ハンフォード・サイトの事業者やパシフィックノースウェスト国会図書館と連携している。
- 地域住民に対する教育、研究活動、とりわけPNNLとの共同研究が活発である。
- コロンビア川の保護に関する共同研究が活発である。
- 卒業生が直接ハンフォード・サイトの事業会社に就職する道を創設した。
- 学生の海外留学や、外国人学生の受け入れについても積極的に推進している。
- ハンフォードの歴史教育プログラムが充実している。
大学附属ワイン科学センター(WSU Wine Science Center)
- ワイン製造の科学的なメカニズムや、ブドウ園の栽培方法等を学習することが出来る。この建物は、伝統的な教室スペース、研究のためのラボ、イベントスペースなどがある。また、ブドウをつぶし発酵させワインを製造、貯蔵する設備が配置された実験室があり、学生が、生のブドウから精錬されたワインを製造するまでの過程を直に学習できる設備を提供している。
コロンビアベイスン短期大学
(CBC: Columbia Basin College)
公立のコミュニティカレッジとして、1955年5月に設立され、1967年に今の大学の形態となった。
- 学生数は11,368人で、ヒスパニック系の学生が多い。
- 教員数は、フルタイムが約150人、パートタイムが約300人である。
- 2年制と4年制がある。また、1年制の課程もある。学位は、応用科学、農業・健康応用管理、サイバーセキュリティ、歯科衛生、情報科学、プロジェクト管理、教員教育、看護、核エネルギー、核科学・技術、溶接、自動車など多様なコースがある。
- PNNLとはパートナーシップ協定を締結して緊密に連携し、例えばエキストラのカリキュラム(追加の課外学習等)を提供している。
- 地元企業から多額の寄付があり、それらの寄付で建物を整備している。卒業後は、地元企業に就職する学生がほとんどであり、Win-Winの関係を築いている。
ポート・オブ・ベントン
(POB:Port of Benton)
ポート(Port)という自治組織の概念は日本にはないが、カウンティ(County)が一般的な行政を取り扱う地方自治組 織に対して、ポートは特別な目的を持つ地方自治組織のことである。
- ポート・オブ・ベントンとして、約9千万ドル(約100億円)の資産がある。13か所、1,115万m2の敷地、50の建物、2か所の飛行場、鉄道や客船を有している。
- 年間の予算は、980万ドル(今年は、1,170万ドル※約13億円)で、職員数は20人(管理運営スタッフ12人、設備メンテナンススタッフ8人)である。
- また、事業全体で、3,290人の雇用と約2億ドルの人件費を支払い、ハンフォード地域の経済発展に貢献している。